オーソン・ウェルズの『アーカディン氏』の中に登場する蛙と蠍のエピソードをここに紹介しておく。
「蠍が湖を渡ろうと考え、通りかかった蛙に背中に乗せてもらえないかと頼む。蛙は断る。蠍に咬まれるかもしれないと考えたからだ。蠍はこう言って蛙を安心させる。“もし僕が君を咬むとすれば、ぼくらはどちらも死んでしまうだろう。ぼくはきっとおぼれ死ぬだろう”と。そこで蛙は承知し、蛙と蠍は湖を渡りはじめる。ところが、湖のなかほどまで進んだとき、蠍は蛙に咬みつき、致命傷を負わせる。蛙は蠍と一緒に湖の底に沈んでゆきながら、蠍にこう問いかける。“どうしてこんなことをしたんだ? おまえも死ぬことになったじゃないか”と。すると蠍はこう答える。“僕にもわかっている。でもどうすることもできないんだ。これは僕のキャラクターなんだ”」